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古早味(伝統的な味、懐かしい味)
2024年11月26日 (火) 20:34
母と台湾(台北)旅行にいってきた。雨の予報だったが、初日に少しパラついたくらいで、あとは曇りとうっすら晴れを行き来するような感じ。暑すぎず、夜少し肌寒いくらいの、観光にはちょうど良い気候だった。
東門に家を借り、2日目の午後は九份へ、3日目は迪化街あたりから歩いて中山に行った。よく歩き、おいしいものを食べた。家の近くにある点心のお店がすごくおいしくて、スーパーでラップを買い、小分けに包んで持って帰国した。今度台湾に行くことがあれば、家からラップとタッパーを持っていこうと思う。
台湾はとても「ざっくりした」国だと感じた。褒めている。
借りた家の建物は古く、各戸に違う窓枠が付いている。同じ建物なのに建具のデザインはバラバラで、窓は二重になっているが外窓か内窓のどちらかが壊れている。階段は幅と高さにバラつきがあり、リズムだけで歩くと転びそうになる。この家だけがそうなのか、と思ったら家屋はどれも似たようなものだった。
食べ物も、サイズにばらつきがある。包装はゆるい。物の値段は書いてたり書いてなかったりする。
ただ、どれも「そんなことにいちいち気が付いたり、ひとつずつ指摘したりするような、大それたことではない」、と感じた。どれも些末なことだ。タイルやレンガの外壁にステンレスの柵が付いた建物はどれも趣があってかわいいし、バラバラの窓枠が良い味出てる。出窓にみっしり並べた鉢植えの植物が垂れ下がり、玄関先から生えている樹木と絡まって混ざり合う様は、のびのびと心地よかった。ロールケーキが少し小さいくらい、なんだというのだ。パン屋さんに惣菜パンと一緒に並んでいる焼菓子たちはどれも素朴で、しっとりしていて、甘さが穏やかで、おいしかった。こういうおおらかさ、雑多さ、不均一が愛らしい国だと感じた。
それに、何においても、過剰に飾り立てることがないように見えた。「あの有名人が持っているバッグを買え」、「流行のメイクを学べ、時代遅れを恥じろ」、「金を稼いで裕福になれ、なれないならコスパとタイパを意識してせめて損しないように生きろ」というような圧もまるでない。私は職業柄、電車や駅の広告を見る癖があるが、台湾の電車には中吊り広告がなかった。ドア横の広告スペースには、文芸賞を受賞したおそらく一般の人の散文詩が貼ってあった。脱毛しろとか育毛しろとか婚活しろとか全然書いてない。家を借りたあたりは繁華街ではなかったせいもあるのか、誰も声を張り上げず、ただただ穏やかに生活をしているように見えた。うらやましいなと思った。
特に市場はとても魅力的で、ただ生活をするだけのことが、どれほど美しいことか、どれほど素晴らしいことか、沁み渡るようだった。山盛りにグァバが積まれた果物屋さんも、木の屋台に直置きされたお肉屋さんも、どれもきれいだと思った。写真を撮ることが憚られて、スマホを取り出せない。「見せ物じゃない」と思ったからだ。そうだよ、生活は見せ物じゃない。今見えてるのはコンテンツじゃないと思った。
台湾でメジャーな果物だというグァバとレンブをそれぞれ買って食べた。コンビニにカットフルーツが売ってたから、たぶん日本でいうりんごとか、バナナぐらいのものなんだろうと思う。レンブは食感がなぜか茗荷に近く、繊維っぽい。水分量は割と多いが、ぶどうやみかんみたいなジューシーさではない。グァバはりんごとかぼちゃの間くらいの硬さ、皮付近のつぶつぶした感じは梨に似ている、茄子に感じるようなやや青くさい味もする。どちらも共通して、甘さがかなり穏やかだった。フルーツといえばフルーツだが、野菜といわれたら野菜、ぐらいの甘み。台湾料理の味付けにも共通するような、濃度だと思った。
そういえば小籠包につける酢醤油や、お魚のつみれが入ったスープも、全然濃くない。酸味も穏やかだし、塩味も優しい。味全体の濃度が柔らかく、角がない。「健康に気遣って薄味にしています」みたいな感じでもない。台湾料理全体がこういう感じなんかも。
見たことない食べ物を積極的に食べられて楽しかったな。台湾料理の素地がまったくないので、ちょっとやってみようと思います。ネギ油の甘辛いタレがかかったごはんおいしかったなぁ……
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