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うちの家の話

2021年3月13日 (土) 06:44

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私が小学2年生から高校を卒業するまで暮らした家に、弟と義妹と甥2人の家族が住むことになった。リノベーション工事が終わった家は、床材が巾広のナラ材に変わり、玄関が広くなったこと以外、大きな間取りの変化はないようだった。出窓の位置にリーディングヌックができていて、濃紺の建具がかっこいい。

この家に私たち家族が引っ越してきたとき、私と姉は小学生で、4つ年下の弟はまだ幼稚園に通っていた。日当たりがよく、風通しの良い家で、夏は球場の花火がダイニングのベランダからギリギリ見える。夜、南側のベランダから、駅の方を見渡すのが好きだった。晴れていると、遠くに島へ渡る橋が見える。

引っ越してきて初めてのお風呂は私と弟がふたりで入った。給湯機の使い方が分からず、どんどん温度が上がっていくのをどうにかしたかったけど、引越した直後で父も母も忙しく、私はとにかく弟をお風呂に入れなければ、と思い、熱すぎるお湯を手桶に汲んで、温度を下げるために水を足し、弟にかける、を繰り返した。「さっそく壊れてたらどうしよう」と不安になったけど、壊れてはなかった。よかった。

弟は、自分たちが実家を引き継いで住むことを、両親とだけ話し合って決めてしまうのは身勝手なことだと感じているようだった。「俺らが住んでもええんか、のんはあの家に思い入れないんか、あゆみにも聞かなあかん、俺らだけでは決められへん」という言い分らしい。

私は実家に思い入れはあるけど、もう自分の家は買ったし、一人で住むには実家は広すぎる。将来的に家族をつくって広い家が必要になる可能性も、まぁゼロではないかもしれんけど、今んとこ予定がないし、もしそうなったらそのときまた考える。それに、あの家が別の人の手に渡って二度と入れなくなるより、弟家族が住んでくれて、たまには遊びに行けるぐらいの方が遥かに良いと思った。

姉はここ7~8年のあいだ東京に住んでいて、あの家に住むために神戸に帰ってくるとは考えにくい。そもそも姉は姉弟の中で一番“もの”への執着が薄い人だ。家を所有したがるタイプには全く見えない。いつだったか「私たぶんトランク一個で急に一人で知らん国に放り出されても、どうにか受け入れてやっていけると思う」と言っていた。精神的に身軽な人である。そもそもトランク一個で急に一人で知らん国に放り出される、という突飛な状況がよう分からんのだけど、そういうことを特に脈絡なく考えること自体が姉らしい。

よって、両親と弟夫婦が話し合って納得のいくようにしてくれ、ということぐらいしか私が言いたいことはなかった。姉が何と言ったか知らんが、たぶん「あーそうなん、ええやん」ぐらいのことだろうと思う。

甥たちは私たちが通った小学校や中学校へ通うのかもしれない。近所の図書室やプールへ行ったり、大丸の電気が消える前に家に帰るよう親に言われたり、駅前でトミーズのポテトを買い食いしたりするかもしれない。なんとも言えず不思議な気持ちだが、家が形を変えて続くのは良いことだと思う。

甥たちはまだ小さすぎて、引越しのことは覚えてないだろうな。私が代わりに覚えておくね。

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