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7にんきょうだい

2021年4月27日 (火) 22:44

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私が何かものを作るとき、仕事ではなく、誰にも依頼されていないのに何か作るとき、ふと脳裏をよぎるのは「すてきなものが欲しいけど あんまり売ってないから 好きな歌を歌う」という、イエモンの曲の歌詞だ。この部分のみを切り取ると、私がものを作る理由が過不足なく言語化されているような気がしてうれしい気持ちになる。曲全体を聞くと全然そんな曲じゃないことは分かると思うけど、まぁそれはそれとして、いいじゃないか。

そうなんだよ、すてきなものが欲しいけど、あんまり売ってなくて、だから、じゃあ私が好きなものを作るか、という、ごくシンプルなことなのだ。原動力はほぼこれだけで、だから私が作ったものを私が「お、かわいいな」とか「なかなか良いのができたな」とか思うことが出来たら、そこがゴールで、私はハッピーである。まぁ「思ったよりイマイチっすね」とか「あんま気に入らんな」とか思うことももちろんあるが、作ったのは自分なので、誰に文句を言うこともない。

とはいえ、数年前まで「もっと身を切り、血を流すような“創作”をすべきではないのか」、という気持ちが少なからずあり、それができる人、そうすることが自然と身についている人に、引け目のようなものを感じていた。
身を投げるようにして物を作る人がいる。何かを削り取り、捧げ、わが身から出たそれと引き換えに持ち帰った何かをまた糧にして、創作をする人がいる。自分の胸のあたりにぼっかりと空いた穴に両手を突っ込み、その空洞の中から拾い集めた何かを握りしめたまま、創作をする人がいる。いつしか「創作とはそういうものなんだ」と私は思うようになった。
でも私はそうではない、なかった、なかったと、気づいてしまった。私は身を切り血を流すような創作をしていない、したこともないし、これからもできない。「作品にどんな想いを込めたか」という問いにはずっと答えられなかったし、さらけ出して見てもらう傷など初めからひとつもない。
ただし、私にも「空洞」はある。胸の真ん中にぼっかりあいた穴はある、ずっとある、あるけど、でもそれと私の創作とはなんの関係もない。関係ないと、気づいてしまった。私が何を作り、誰のどんな評価を得ても、いや得なくても、どちらにしてもこの穴が埋まることはない。無関係だからだ。

それに、私はこの先一切何も作らなくても、まぁ生きていけるだろう。私以外の誰かの創作で生まれた、音楽や映像や文章や絵画によって、私は生きていけるだろう。既に世は誰かの創作物にあふれており、今この瞬間も増え続けている。すべてに触れるなんて無理な量が既にある。鑑賞したり感動したりしているうちにあと50年くらいはあっという間に過ぎると思う。
また、私が作ったものが世や人に何か影響を与えることは、これからもこの先もないだろう。でもそのことに絶望すらない。そうか、まぁそんなもんか、別にいいけど、と耳の下をポリポリ掻いて、今日まで来た道を戻れるだろう。

それでも私は、何かものを作るのが、創作が、引き続き好きだ。私は私が作ったものが好きだ。すてきなものが欲しいけど、あんまり売ってなくて、だから私が自分で作る、私が作ったやつは私が気に入る(確率が高い)し、かわいいから、だから引き続きやっていく。創作とは、表現とは何か、みたいな話はどっか別でやる。

だから、前にハヤシさんが「俺、ワクワク原理主義者だから、ワクワクすればそれだけでやれる、血とか流れないし傷ついたりとかもしないけど、誰に何を言われても、自分の気が済むまでやるしかない」と言っていたのを聞いたとき、私がこもっていた部屋の窓がばーん!と開いて、換気~!という感覚になった。そうだよな、そういう人もいるよな、と思った。よかった、こういう人がいてくれてうれしい、と思った。

ハヤシさんはうどん職人のドキュメンタリー映画を作っていて、こないだついに完成したらしい。私もいつか観られるのかな、わからんけど、すごく楽しみにしている。

つーか創作の話をしているとよく承認欲求の話も出てくるけど、これはそんなに密接な関係があるものなのだろうか。完全に人によるとは思うけど、私の創作と私の承認欲求はほぼ関係していない気がする。私の承認欲求は例えばなかひろが「送ってくれたハンバーグ食べたよ!おいしかった!」とLINEをくれたらそれでもう満たされている。甥が「のんちゃんだっこして」と手を伸ばしてくるだけで満たされている。私は必要とされている、私は優しくされている、私は愛されている、と感じることができる。これはでも他者承認なのか。自己承認はまた別?でもほぼイコールなんじゃないの。知らんけど。出た「知らんけど」。

承認欲求を持ち込まず、誰の身も切らず、己が血も流さず、自分の穴は脇に置いて、私はこれからも何か作って生きる。

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