TANAKA NOZOMI

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mon petit chou

2021年1月5日 (火) 21:31

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今年の抱負を「シュークリームを作る」、とした。今年も食への飽くなき探求心をもって生きる、という意味もあるし、精神的な意味もある。精神的な意味で「シュークリームを作る」って何なんでしょう。何を言っているんでしょうね。

元来、私はお菓子を作るのがあまり好きではない。なかった。材料や手順を間違えたり、変えたりした時のリカバリができない(もしくは難しい)のがその理由のひとつである。

例えばカレーを作るとき、レシピに「まず鶏肉を炒める」と書いてあるとする。そこで間違えて玉ねぎを炒めてしまったとする。あぁ玉ねぎを先に炒めてしまった、と思い、鶏肉を鍋へ放り込む。
カレーの場合はそれでいい。厳密に言うと火の入り方には違いがあるけど、先に鶏肉を炒めたかどうかなんて、しっかり煮込んでしまえばわからないし、大した失敗にはならない。味だってそんなに変わらない。
そもそも「鶏肉を炒める」と書いてあるのをガン無視して「豚こま肉を炒める」にしたって問題ない。料理は冷蔵庫に優しく、懐が深い。

その点お菓子は、白身と黄身を分けろ、グラニュー糖を使え、粉糖を用意しろ、ベーキングパウダーを2グラム入れろ、小麦粉をふるっておけ、オーブンを180度で予熱しろ、バターを常温にもどせ、白っぽくなるまで混ぜろ、切るように混ぜろ、ツノが立つまで泡立てろ、と口うるさい。朗らかさがない。
そのうえ私はお菓子作りの経験がほとんどないので、イキってベーキングパウダー2グラムを入れなかった場合はどうなるのか、薄力粉が途中で切れて強力粉をぶち込んだ場合はどうなるのか、冷たいままのバターを放り込むとどうなるのか、などが分からない。分からないので応用が利かない。レシピ様の言う通りにスーパーを回って材料を買いそろえ、ひとつひとつスケールや匙で量り、最後まできちんと手順を守るしかない。防戦一方。

とはいえそれが楽な日もある。
「スケジュールください」「サンプルください」「ラフ案ください」「企画提案書ください」「見積ください」「いつデザイン案できますか」と次々に言われ、そのうえ「原稿も写真も無いんですけどなんとかしてください、あ、イラストとかも無いんですよね、あはは、まぁなんとかしてください、できますよね?」みたいなことが日常茶飯事、おいコラ私の仕事って全然デザイナーじゃないやん「なにかをなんとかする人」やん、新しい肩書の名刺をください、あと基本給あげてくださいタココラ、という毎日を送る中で、お菓子のレシピはただひたすら繊細で、明確だ。

そもそも毎日の生活にはレシピが存在しない。
「あの人が、ほんのちょっとでもいいから、私のことを好きになってくれないかな、どうすれば、何て言えば、受け入れてもらえるかな」と、年甲斐もなくもじもじめそめそ考えているとき、指針となるようなレシピはない。
バターを常温に戻すかどうか、グラニュー糖を使うかどうか、自分で考えるしかないし、行動に移すかどうかだって、自分で決めるしかない。その思考と決断の末に得た、膨らまなかった丸焦げのケーキをどうするのか、なんとかして食べるのか、心を無にして捨てるのか、それも自分で決めるしかない。そんな日々の中で、お菓子のレシピは細やかに、私を甘やかす。

オーブンに生地を入れ、焼きあがるのを待つ間、家じゅうがいい匂いになる。バターとたまごの匂いを嗅ぎながら、オーブンの前に座り込んでぼーっとする。決められた通り素直に手を動かすことも、私には必要なことなんだろう、と思う。ぐちゃぐちゃ理屈こねてないで、黙々と手だけ動かす日が、私には必要なんだろう。そうだよ、これは休息だ。ありがとう焼き菓子たち、ありがとう栗原はるみさん。

しかしながら、最近は焼きっぱなしのケーキがおもしろくなくなってきた。量って混ぜてオーブンに入れればケーキが焼きあがるのはウケるけど、慣れればわりと普通のことになってきてしまったし、栗原はるみさんのレシピは丁寧で簡単で、あまり失敗する余地がない。道具や材料もある程度は揃ってしまったし、もうちょっと難しいやつやりたいな。何が良いかな、でもいいにおいするやつがいいの、パンを焼くのもいいかも、と思った矢先、ふと思いついた。

あぁ、シュークリームだ、シュークリームがいいな。

「シュークリームはむずかしいよ!」と、お菓子作りが好きな人たちはみな口を揃えて言う。「あれはもう二度とやんない」だの「一時期よく作ったけどな~最近は全然、めんどくさくて」だの、「失敗しても成功しても、原因がよう分からんままなんよ」だのと、なぜか楽しそうに話す。

いくつかレシピを調べると、肝になるのは卵の量らしい。確かに卵はひとつずつサイズが違うし、厳密に言うと白身と黄身の量も絶対イコールにはならない。「卵3個」としても、微差が必ずある。シュー生地はどうやら、その微差を許容してはくれないらしい。いいですね、なんか繊細なわりに高飛車で、いいですね。
他にも、焼き菓子系のレシピには出てこない「材料を火にかける工程」があるし、絞り袋も使う。型を使えないのでサイズを揃えるのも苦労すると思う。確かに難しそう。

中にいれるクリームも、カスタードクリーム、生クリーム、ガナッシュも良いし、ナッツとか、果物を入れるのも良いし、いろいろ展開できそう。シュー生地が作れるようになったら細長く焼いてエクレアもできるし、あぁサントノレも、パリブレストもできるやん。あとあれ、ほら、クロカンブッシュもできるはず。
よーし、シュークリームやるぞ、シュークリームをやっていくぞ。

思うように膨らまなかったり、きれいな形にならなかったりするんだろうか。空洞にならなかったり、うまく切れなかったり、するんだろうか。そうだといいな。頑張ったのに簡単にはできなくて、失敗作をもしゃもしゃ食べながら、何でだめだったのか、次はどうするか、どうすれば上手くなるか、いっぱい考えて、それでもまだ挑戦したいと思えるのがいいな、そういう過程を楽しめるようにしたい、今年はそういう1年にしよう。

上手くできたら食べさせてね、とヨウリーさんが言うのでうれしくなってしまって、早くも包装紙について考えている。こういうのなんていうんだっけ、捕らぬ狸の皮算用?ちょっと違うか、どっちかっつーと「まだ捕っていない狸に着せるワンピースをデザインしてる」みたいな感じだ。何それ。

今年も楽しいといいな、頑張りますね、よろしくお願いいたします。

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