TANAKA NOZOMI

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Pier No.5

2022年5月30日 (月) 21:09

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先日、ミニマル/コンセプチュアル展を観に、県立美術館へ行ってきた。めちゃくちゃおもしろかった。おもしろすぎて、久しぶりに図録を買った。

私はミニマルアート、コンセプチュアルアートのどちらにも明るくないので(いや、私は美術や芸術の素養がほとんどないのでこれらに限った話ではないが)、全然理解できんかもしれん、でもまぁそれならそれでいいや「なんも分からんかった~!うわーん!」つって帰ればいいや、と思っていたが、丁寧で的確なキャプションのおかげで、大いに楽しむことができた。ありがたかった。作品そのものだけでなく、ギャラリーで個展をやるまでに交わした手紙や電報、コンセプトを書いたドローイング、作品の指示書(ミニマルアートは作者本人が作らない場合があるので、現場の人間に向けて作品のレシピのようなものを渡す)、個展の案内(デザインが良い)等も展示されていて、見ごたえがあった。
ちなみにコンセプチュアルアートというのは、めっちゃざっくり言うと「誰が物質的に何を作ったか」という成果物そのものよりも、その元となるコンセプトやアイディアの方がおもろいやん!?そっち重視しようや!みたいな考え方のこと、です。起った時代(今から60年前ぐらい、わりと最近)から考えるとカウンターカルチャーっぽい側面があるよなぁと思うけど、どうなんですかね。詳しくは知りませんすみません。

私は世のすべてのものごとに対して基本的には「分からないものを分からないまま置いておきたい」という気持ちがあるし、「私が分かりたいときに分かるから放っておいてくれませんか」という気持ちもあるが、ことコンセプチュアルアートに限ってはそういうわけにもいかない。分からな過ぎて迷子になるからだ。「これはこうやって見るものなんですよ」と親切に手を引いてもらって、私はようやくその作品を見る角度を理解し、作者の意図を理解し、その思考を辿ることが出来るようになる。
とはいえ「こういうコンセプトなんですよ」の範疇を飛び越えて「ほーら、この作品を見て○○○な感情になったでしょ!それが正しい感情でーす!」みたいなところまでをキャプションでやられると、これにはめちゃくちゃ拒否反応を示してしまう。私の感情は私が決めるし、この感情に名前を付けるかどうかすら私が決めるので、黙っていてくれませんか気持ち悪いので、と思うのだ。もちろん潔癖すぎる気もしているが、それを咎められる筋合いもない。……喧嘩腰すぎるね!わはは!怒ってません!

もしくは私が「鋭敏な感性の権化」みたいな人間だったなら、金属の塊を格子状に並べた作品や、数字を羅列してファイリングしてある作品を、ガラスパネル越しにただ見るだけで、何もかもを深く理解することができたんだろうか。もしそういう人間だったら、言葉みたいなツールはとっくに放棄して、もっと人に優しく、穏やかに生きていけたんだろうか。

河原温の作品は「Date painting」を国立国際美術館のコレクションで見たことがあったが、「I Got Up」と「I Am Still Alive」は、今回初めて見た。「Date painting」はその日の日付をその日居た国の言葉で描く、という作品で、「I Got Up」は自分の起床時間をポストカードにスタンプで印字し毎日友人に送る、という作品、「I Am Still Alive」はその名の通り「I Am Still Alive(私はまだ生きている)」と電報を打つ(これも友人宛に)、という作品だ。いずれも制作物自体はスタンプなどの印字された文字であったり、筆跡を消したタッチで描かれているものなので「本人が手で描いた」という観点のみで見れば「価値」はないし、当然あたたかさ・ぬくもりなどは皆無で、そこから感情を読み取るのは難しいし、無機質とも言える。
でも「私はまだ生きている」と、「私は8:04に起きた」と、送らなければならない、もしくは送らずにはいられない感情や、またはそれを送りたいと思い実行するほどの衝動、などを追体験すると、私は胃の底がザワザワとし、奇妙なことだが「いじらしさ」みたいなものを感じて泣いてしまった。古びたポストカードに印字された河原温さんの起床時間を仁王立ちで眺めて泣いている私も、54年後の今をまだ、生きているのだ。
というか「私はまだ生きている」と打った電報が彼の友人に届くまでには時差があり、それが届いた時点でまだ生きているかどうかは分からない、というのもザワザワする。なんなんだよ。なんなんだこのねじれた切迫感は。泣いてる私が頭おかしいのか?うるせぇほっとけ。

美術館を出た後は、埠頭をぐるっと一周して駅へ向かう遠回りのバスに乗り、不味くはないが特別美味くもない蕎麦を食べて家に帰った。
たくさん頭を使って、歩き回ったし、ちょっと泣いたから疲れた。

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