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晴れの
2024年9月17日 (火) 20:51
岡山に行ってきた。数年前にnever young beachを見に行って以来だ。調べたら7年前のことだった。そんなに?
前も思ったけど、岡山は近い。兵庫県の北の方に行くより近いくらいだ。前回はJRで姫路まで行き、コツコツたどり着いた記憶があるけど、今回は行き帰りとも新幹線にした。30分くらいで着く。
オリエント美術館という市立の美術館に行った。その名の通り、古代オリエントを専門に扱う美術館で、広くはないけど吹き抜けで天井の高い建物がとてもよかった。上部に窓があるスペースもあって明るい。美術館て基本的には外光を嫌う感じがあるので「広いし明るいのになんか息苦しい」みたいな時がある。こうやって外光が少しでも入れてあって、吹き抜けにしてあると全然違うね。良い美術館だな。壁材のテクスチャも素敵。トイレにあるタイル製の手洗いボウルもよかった。
ガラスの特別展を見た。私は美術には興味があるし食器が好きなのでガラスについての知識は多少あるけどそれ以前に歴史に詳しくなさ過ぎて、展示品を見ている時間よりキャプションを読む時間の方が長かったように思う。意図や価値や情景を感じ取るために、知らなくていいことなんて何ひとつもないな、と思った。それでも、熱心にキャプションが書かれていることはちゃんと分かるので、楽しかった。「これ結構重たいし装飾がすごいから置物かと思ったけど、フチのとこが欠けてるねん、実用品やったぽいわ、やばくない?」みたいな(意訳)いかにも研究職っぽい目線のキャプションが添えられていたりする。こういうの大好き。また、ガラスがいろんな時代と場所で「○○っぽいもの=何かの代替」としての役割を担っていたのも初めて知って、おもしろいなと思った。大理石っぽいやつガラスで作る、とかね。
最後は喫茶室でトルコ式のコーヒーを飲んだ。トルコのコーヒーは挽いた豆と砂糖、スパイスと水を入れて小鍋で煮出すらしい。粉ごとカップに注いであるので、沈殿するのを待ち、上澄みを飲むのだそうだ。おいしかった。スパイスに決まりはないが、うちはカルダモンを使っています、とお店の方が丁寧に説明してくださった。
飲み終えたらソーサーにカップをひっくり返して、粉の流れかたを見る占いをやるらしい。お店の方いわく「茶柱が立つ、とかぐらいの感じでしょうかね」とのこと。日常にある占いって、どこの国のもみんなかわいいね。
岡山駅からバスに乗って1時間ほどのところにあるお店で豆花を食べた。豆花は私のいちばんの好物、と言える日もあるくらい好物(弱気)なのだが、そもそも食べられるお店が少ない。旅先では必ず豆花を出す店がないか調べ、行けそうな距離なら足を運ぶようにしている。
お店はとても繁盛していた。豆花は柔らかいのに大豆の食感があり、繊維が残るほどたっぷり入った生姜シロップがおいしかった。お昼ごはんを食べていないのを言い訳に、粽と焼小籠包も食べた。満腹。
いったんホテルに移動してチェックイン。駅から歩いて20分くらいのホテルにしたのを後悔した。暑すぎる。タクシー乗ればよかった。徒歩20分て、人によっては全然歩けない距離な気がする。私にとっての徒歩20分は「もし家を借りるならそこには住まないけど、ただ歩くだけなら別に苦ではない(真夏と大雨を除く)」程度の距離。
電車でまた1時間ほどかけて岡山駅に戻って、7年前にも行った古道具店へ。東洋陶器のカップ&ソーサーを買った。1960年代のものだそう。食器を作っていたのがそれぐらいの時期、と記憶してるけどあんまり詳しくはない。東洋陶器は現在のTOTOさんです。
夜はアナログフィッシュのライブ。主目的はこれだった。10月の渋谷クアトロのワンマンでしばらくライブ活動をお休みするらしいので、私はこれで見納め。見納めに全くふさわしくないほど、素晴らしいライブだった。岡山でのワンマンは初めてらしいが、お客さんがみんな明るくて、ピュアでハッピーでかわいかった。なんというか、カラッとした好意で溢れていた。こんなふうに歓迎されたら嬉しいよな、と何故かバンド側の気持ちに。ただ音楽が好きなだけの人って、見ていてすごく嬉しい。あぁこういうのが好きだった。こういうのが好きで、今もずっと好きなんだった。これからも音楽が好きでいたいし、そこにアナログフィッシュがいてほしい。『車窓』を聞きながら生きていきたいし、「好きだよ」と言うより「君になにかしてあげたい」と言いたい。『Yakisoba』がほんとうに大事な曲なので、私が死んだら葬式で流してください。
サポートメンバーのRyo Hamamotoも、バンドのライブ活動休止と同じタイミングでアナログフィッシュの活動を離れるらしい。本当にすごい人なので、残念だなと思う。すごい人、というか、まぁ私はギターのことは別に何もわからんのだけど、なんか頼もしいのよな。例えば鉛筆と消しゴムと紙があって、よしこれで十分絵が描ける、すごく良い絵が描けるようになったぞ、というところに色鉛筆と絵具と色紙と定規とコンパスとはさみとイーゼルとキャンバスを担いでやってきた人、みたいな感じ。ね、頼もしいでしょ。ギターヒーローでしょ。でも、この人はそもそもソロミュージシャンだし、ご自身の活動もしながら、ここまで一緒にやってくれていた人なのだ。また再開のときにいてくれたら嬉しいけどなぁ。今夜もとってもかっこよかった。あ、ちょっと待って私、ギタリストを「かっこいい」と思うの、初めてかもしれん。「好き」なギタリストはおるねんけど、ちょっと質感が違う。
あとRyo Hamamotoは京都の紫明会館でアコースティックライブの時に、アップライトのピアノを弾いて、あとマンドリンも弾いてくれて、あれも最高でした。忘れないよ。
満たされた気持ちで、また1時間ほどかけてホテルへ。ホテル取る場所おかしいよ。さすがにタクシーに乗った。タクシーってすごい乗り物だな。車に乗せてくれて、好きなところへ運んでくれるのすごくない?しかも私だけを。すごい。
翌朝、宇野港へ。私はほんとうに都会でしか暮らしたことがないのだな、と実感する。駅に行けば電車が来て、港へ行けば船が来ると無意識で思い込んでいるのだ。王様か。
朝6時くらいにはぜんぜん起きてたのに、フェリーの時間を全く調べておらず、港で1時間半も待った。アホじゃない?急いでないとはいえ、今日は家に帰らないといけないのだから、計画的に動く必要があるのに。行き当たりばったりすぎる。普通に愚か。
とはいえ待合室は空調が効いており、読書が捗った。
フェリーで直島へ。自転車を借りたかったが天気が良すぎる。自転車に乗ると日傘をさせないので、バスと徒歩で移動した。家からずっと自転車で来たらどれぐらいかかるんだろう。自転車でフェリーに乗る人を見て思う。
あまりにも天気が良く、海もきれいで「想像の中の夏休みに居るみたいだな」と思った。今年覚えた韓国語に「윤술」というのがある。水面に光が当たってきらきらしているさまを指す言葉なのだけど、この日は海を見ながら何度も口の中で唱えた。
3つほど美術館を周った。李禹煥美術館に行けて嬉しかった。どんなサイズになっても李禹煥の李禹煥っぷりはそのままだということも分かった。ここで1泊させてほしい、作品に触れたりしないから。
李禹煥に限らず、島中に大きい作品ばかり置いてあるのでそれも良かった。大きい作品て身体に良い感じがする。境界が分からなくなるからだと思う。自分と、そうでないものの境界が。たぶん、元々そんなものはないのに、あることになっていて、だから「あることになってる世界から来たんだね、いいことを教えてあげる、もともとないよ、ないものだよ」と発信されることが、身体に良いんだと思う。
モネもよかったが、そんなことよりモネの展示室の床材がよかった。あれは何、タイルなのか?どういう素材なの。タイルって普通なに、磁器か。いやそういうんじゃない。そういうかんじじゃないの、なにこれ。展示室は靴を脱いでスリッパに履き替えて上がるようになっていた。モネより床材を見たり触ったりしている時間の方が長かったかもしれない。
いやモネも良かったよ。モネって結構、あの、酩酊でしょう。モネの良さは分かっているつもりです。(あくまでもつもり)
モネの展示室は床材だけでなく額縁もよかった。あれは木とかじゃなくて石やと思うけどね。シーーーーンとした素材でよかった、というか展示室自体がシーーーーンとしている、いや客はしゃべってるけども。
そもそも絵に合わせて額縁だけじゃなくて展示室から作るって夢みたいに良い案じゃない?
しかしなんとまぁ、安藤忠雄はもちろんすごいが、これらを建築物として作った人たちがいることも同じくらいすごい。「ここに三角のエッジが入ってたらかっこいい」と思いつき、作りたいと発信することと、それを受けて実際にコンクリートで作れることとの価値は同じだと、私は思う。
さて、こんなのに良い意味も悪い意味もないので深く考えないようにしているが、私はひとりで観光地へ行くと日本人に見られないときがある。直島みたいに海外からの観光客が多いところでは特に。このような経験は一度や二度ではないが、でも別に理由が知りたいわけでもないから、誰にも話したことがない。
ひとつめの美術館では問答無用で英語のパンフレットを渡され、英語で説明を受けた。英語で説明と言ったって別に「写真を撮っていいのはこのエリアだよ」とか「大きい声でおしゃべりしないでね」くらいのことなので聞き取れるから、構わないけど。訂正するのも面倒だし。でもチケットを買うときに私は「こんにちは」と「おとな1枚です」を言っているし、説明を受けているときも終始「はい」と相槌を打っているので、英語で返される理由がよくわからない。私、日本語の発音おかしいのか?外見のせい???体型?何?
みっつめの美術館でも流暢な英語で展示室の案内を受けたがまったく聞き取れなかったので「ジャパニーズですすみません」と返し(なんのすみませんや)、カフェでは「これを持って外に出てもいいんですか?」と韓国語で聞かれ「はい、そのドアですよ」と韓国語で返事をした。
なんなんだろうな。あ、別に理由を知りたいわけではないです。
総じて良い旅行だった。直島には冬の平日あたりでまた行きたい。
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