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中華料理はいけるかい

2022年8月8日 (月) 21:41

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先日、家族一同で中華料理を食べに行った。中華料理には思い出がある。祖父が好きだったからだ。

おいしいものを食べ、おしゃべりをして酒を飲むのが好きだった祖父には、いくつか行きつけの店があった。バス道の通り沿いにある中華料理屋はそのうちのひとつだ。
私たち家族がその店に行く日はたいてい土曜か日曜の夜で、誰かの誕生日でも、記念日でも、お祝いでもない日、ただ祖父の「中華料理食べにいこか」という電話によって決まった。店はいつでも混雑していた。店の前のベンチに並んで座り、お腹をすかせて「7名様でお待ちのタナカ様ぁ~」と家族の名前が呼ばれるのを待った。
回転テーブルが乗っかった円卓の席に通され、私たち姉弟は好きなものを何でも食べてよかった。みんなが好きだったメニューはミンチのレタス包み(ひと玉ぶんあるんじゃないかと思うぐらいのレタスの量)、春巻き(皮がたまごのやつ)、五目やきそば(半熟の目玉焼きがのってる)。
最後の一個になった唐揚げを取り合う私たちに、祖父は瓶ビールを飲みながら、いつも「もうひとつ頼んだらええ」と言ってくれた。
祖父との思い出はほとんどが食べものと紐づいている。私が食いしんぼうだからだ、と思っていたが、祖父がみんなでおいしいものを食べるのが好きな人だったからかもしれない。

と、いうような思い出を聞いた義妹(弟の妻)は、その話を長らく覚えてくれていた。そして、自分の子供たちにもそんな思い出があるといい、祖父や祖母、家族みんなと中華料理を食べる思い出、回転テーブルをぐるぐるさせて、好きなものを何でも食べていいよ、と言われる思い出が、あるといい、と考えたらしい。
発案があれば話は早い。確かにそれは良い案だな、ということで家族一同、揃って中華料理を食べに行った。

甥たちは4歳と2歳だが、ちゃんと椅子に座り、お店が出してくれたプラスチックのフォークとスプーンを使って食事をしたので私は感動した。甥たちと外食したことがなかったからだ。食後もふたりはご機嫌に歌を披露したり、恐竜のおもちゃを回転テーブルに載せたりして、みんなが食べ終わるまで上手に遊んでいた。えらかったね。
こういう場にあまり顔を出さない叔母が来てくれたのも嬉しかった。何を話すわけでもないけど、1年に1回くらいは、一緒にごはんを食べたい。叔母が注いでくれたビールの泡は細かくあまりにきれいな層になったので、弟が大喜びしていた。

しかし、中華料理ほど大勢で食べるのに適した料理はないんじゃないだろうか。
「えっもう水餃子ないの、私食べてないけど」「麺類いこっか、焼きそば?汁そば?」「もう一個頼みなさいよ」「チャーハン食べる人~?」「お皿もらって」「小籠包入れてあげて」「あれ食べたい海老とたまごのあんかけの、ごはんのあれ」「どっち食べる?どっちも?」などと騒ぎ、円卓から取り分けて食べるのは楽しいし、お酒にもごはんにも合うから子どもも大人も満足する。今後もこうやって、みんなで円卓を囲む機会があるといいと思った。祖父の弔いにもなるかな、と思ったけどそれは傲慢だ、と考えたところで、祖父の大きく口を開けて笑う顔が浮かぶ。へへへ。

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