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この夜は台無しに
2022年1月28日 (金) 22:32
アナログフィッシュのベース・ボーカルである佐々木健太郎さんが大阪のFM802にご出演されたので、その放送をradikoで聞いた。先月バンドのあたらしいアルバム「SNS」が発売されたので、その“全曲解説”だ。全曲解説なんて、めずらしいな。
ラジオの中のいちコーナーとして健ちゃんがひとりで話すのだが、本人の「いかにも用意した原稿を読み上げていますよ」という感じと「でもちゃんと気持ちを込めて読み上げるぞ」という意気込みの両方を感じて、すごくよかった。健ちゃんらしいな、と思ったからだ。
健ちゃんはライブなどでは比較的自由奔放(に見える)な振る舞いを見せる人だし、歌声もソウルフルでファンキーな印象があるので、思いつきで行動するアドリブタイプの人かと思いがちだが、実際は「ここで腕を振り上げようと思って家で練習してきた」とか「ライブの前の晩にイメトレをする」、「お客さんがいるのを想像して、コール&レスポンスの練習をする」とか言っているので、わりとちゃんと準備をする人なんだと思う。
The La’sの曲をライブでカバーしたときも、カタカナで「デーシーゴー(※There she goes)」と歌詞を手書きした紙を用意し、それを足元に置いてカンペにしていた。
私は健ちゃんのこういうところがとても好きだ。お客さんに楽しんでほしくて、そのために自分に持てる力を発揮したくて、でもだからこそちゃんと用意していくぞ!準備万端でやるぞ!という振る舞いがすごく好きだし、にも関わらずずっと“ハート”とか“心”とかを取り出して見せてくれるような性質の人で居続けていることが、とても良いなと思う。まぶしい人だ。
全曲解説は内容もすごくおもしろかった。パーソナリティーの土井コマキさんも言っていたけど、こんなふうに自分の言葉で、自分のことだけじゃなく「下岡晃というシンガーソングライター」について話す佐々木健太郎は初めてだったのでは、と思う。私はもちろん下岡晃本人ではないし、そもそも全然関係ない人間なのに、なんかうれしい。
健ちゃんと下岡晃は別の人間なんだから当たり前だけど、10代からずっと友だちで、20年一緒にバンドをやっていても、健ちゃんには健ちゃんだけの「下岡晃観」があるのだ、と思うとうれしい。逆もまた然りなんだろう。
インタビューとかでもこのあたりをあまり突っ込んで聞く人おらんかったんちゃうかな。私が聞き手だったら佐々木健太郎に向かって「下岡晃というシンガーソングライターについてどう思いますか?」なんて聞かんもんな。質問がざっくりしすぎてるし、そう聞かれて出てくる言葉と「アルバムの全曲について解説してください」って言われて出てくる言葉とは、たぶん違うんじゃないかと思う。
「ロックバンドが歌詞に“居酒屋”って使うの?と思ってびっくりした」というようなことを言っていたのもよかった。この人は自分たちがロックバンドであると認識し、そのことに矜持があり、そして自分のど真ん中に今もなお“ロック”が燦然と刺さっているのだろうな、と思った。あぁすてきだな。かっこいいね。
あと「リリックがちょっとパーソナルすぎるかなと思って、ソロに回そうかとも思ったんですけど」と言っていたのも興味深かった。どうやって振り分けてるのか、聞いてみたかったから。
最近は「音楽に解説とかいい、説明しないで、要らない、そっとしておいてくれ」と思うことが多いから、聞こうかどうかちょっと迷ったけど、聞いてみてよかった。
蕎麦には/ねぎ/そしてわさび
2021年12月14日 (火) 22:02
アナログフィッシュの新しいアルバム、その名も「SNS」が発売された。今そのタイトルなの、今2021年なんだが、今なのか、今なんだね、なるほどわかった。
CDの帯には「たとえば ストレス/ない/生活」とある。ほほぅなるほど。わかった。
アルバムは聴く前から知っていたが、めちゃくちゃ良い。超良い。何周聴いてもずっと良い。
なぜ「聴く前から知っていた」かと言うと、私は前回のアルバムが出た後も可能な限りライブへ足を運び、配信ライブを観て、ファンクラブ会員限定の生配信コンテンツなどを観て、その中で披露されてきたいくつかの新曲を、聴いてきたからだ。彼らの曲は聴くたびにアレンジや歌詞が変わるし、これまでの経験上「そのままレコーディングされることはない」と知っているので、ライブで新曲を演奏されるとやや緊張する。まばたきするのも惜しいくらいだ、ぜったいちゃんと聴きたい。
心斎橋のジャニスで聴いた「うつくしいほし」、同じ日に「U.S.O」を聴いたと思う。佐々木健太郎・下岡晃、両者ともの新曲があまりにかっこいいのでうれしくてお祝いしたくなり、私は帰り道にお寿司屋へ行き、緑茶ハイでひとり乾杯した。しまあじがおいしかった。
「Yakisoba」を聴いたのは配信ライブだ。私は開始直前まで昼寝をしていて、目が覚めたらお腹がすいていて、だから焼きそばを作って食べて、そのあとだった。「うちに帰ったら焼きそばを食べよう 3食入りの食べ慣れたやつを」という歌い出しだったから、びっくりした。私が食べ慣れてる3食入りの焼きそばはマルちゃんのやつなんだが、下岡晃も同じだろうか。
私はこういうミニマルでシンプルな、やさしくて少しさみしい曲が好きだ。私が思う「孤独」の形と似ている気がする。なんでこんな曲が書けるんだろう、私が作った曲ってことにならないかな。だめですか。そこをなんとか。
「Is It Too Late?」を初めて聴いたのはいつだっただろうか。ライブでは4~5回ほど聴いたと思う。徐々に確立されていく彼らのコーラスと、その過程を聴けることは、ファンとしてほんとうに幸せなことだ。
7曲目に収録されている下岡晃の曲「さわらないでいい」をCDで再生し、初めて聴いたとき、臓器が全部一旦止まったような感覚がした。なんだこの曲は。すごい。かんべんしてくれ。え、これどっかのライブでやったのかな?一回聴いたことあるような気もしてきた。いや気のせいかもしれん。
まず、私はこれが何の曲なのかわからない。わからないのが良い。あなたが歌う「毒がある」という「その棘」は、何のことだ、でも私は「さわらなくていい」と言われている。なぜ「毒がある」と知っているの。触ったのか。触った人を見たのか。何の歌だ。全然わからない、でもわからなくて良い。歌詞なんかわからなくて良い。
やさしくされてる、と思う。最近の下岡晃の曲、すごい「まもられてるな」と感じる。理由はわからない。でも「無理にはなさなくていい この沈黙はいやじゃないから 今はしゃべらなくていい」って、すごく、やさしくされていませんか。そんなの人に言われたことないし、人に言ったこともないわ、そうだよ、言ったことない。私は「無理に話さなくて良い、この沈黙は嫌じゃない」と、人に言ったことがありません。思ったことはあるけど、でも言ってみてもいいのかもしれない。なんつー曲だ、うおお、すごい、かんべんしてくれ。
「うつくしいほし」はライブで聴くとかなり切迫感がある。積み重ねるようなリズムのAメロから「とおくからみればうつくしい」と繰り返すサビ。喉元にナイフを突きつけているような切実さ。下岡晃のこういう曲を聴くとき、私はちゃんと聞こえているのに耳が遠くなったような、シーンとした気持ちになる。手も足も全く動かなくなるし、髪の生え際がざわざわ、後頭部のあたりがびりびりする。なんて、かっこいい、きょくだ。
レコーディングされた「うつくしいほし」は、ライブで聴いたよりもずっと、やさしい・やわらかい印象を受けた。でも、どっちも好きだな。
あの喉元ナイフバージョンはまた、ライブでは聴けるんだろうか(※そんなバージョンはない)。
健ちゃんはここ数年の間ずっと、熟成がすすむ赤ワインのようだ。とろりとロマンチックで、ビターに熟している。光に透かすとキラキラする声。私はワインに全く詳しくないのでこの比喩は危険かもしれない。が、文章はこのまま進む。
健ちゃんは太陽の人だ。ご本人と面識はないしまともに話したことなど一度もなく、私はただ17年くらいステージの下から彼を見上げているだけのファンだから、あくまで印象論でしかないが、健ちゃんは太陽の人だ。いつも大きい口を開けて少し斜め上を見ながら「希望はある」と歌い、赤いスニーカーを履いて外へ連れ出してくれる。素直で、天真爛漫で、でもシャイで、ストンと健やかな人だ。ま、めちゃくちゃ酒飲みらしいと聞いたこともあるけど。
ベースもギターもキーボードも持たず、ただその声だけでエンターテイメントを成立させられる才能があり、にも拘らず、そのことを自覚していないようにも見える。まぶしい。
健ちゃんはロマンチックだ。現代において、ロマンチックは最も難しいスタンスかもしれない。
ボケよりツッコミがウケる時代になった。もう10年ぐらいずっとそんな感じだ。SNSユーザーはあらゆるものごとに下手なツッコミを入れたがり、その速度を競い合っている(ように見える)。Twitterはまるで“うまいこと言うた奴選手権会場”のようだと思う。世はリアリストで溢れ、軽い気持ちで放り投げたボケにはマジレスとクソリプが来る。マジレスとクソリプって本来別のものなのに、もはや同じ意味に聞こえる。
そんな中で、ただ堂々とロマンチックであること、聴く人をロマンチックにさせられることは大変難しい。今ロマンチックをやるには強度が要る。ちょっとやそっとのロマンチックなんかでは何にも勝てない。誰も酔わない。リアリストの口を塞ぎ、聴く人の目をやさしく塞ぐロマンチックには、強度と深度が要る。健ちゃんはそれができる。
9曲目に収録されている健ちゃんの曲「Can I Talk To You」は間違いなくロマンチックだ。テレもせずど真ん中に、これ以上重くはできないであろうロマンチックを、ズドンと置いていく。このアルバム、最後の曲がこれなの?超かっこいいな。つーか健ちゃんの最近の曲に出てくる女の人って結構バチバチに怒ってて、それも良いな。
前作「Still Life」からもう3年か…あの時も「極まってんなぁ~」と思ったのに、まだ先が、まだ奥が、あるようだ。そうですかそうですか。わかりました。どこまででも一緒に行くよ。
Young Forever
2021年10月25日 (月) 22:18
BTSのオンラインコンサートを見たので、その感想を書きたいと思ったがどうにも難しい。あらゆるものごとは多面的で、多層的で、どこをどう切り取ってどのように食べ、咀嚼し、何として出力するのかは、どこからも誰からも供されない、私が自分でやるのだ、いつだって、というようなことを考えた。人間が作り、人間が見ているのだ、私は本当に音楽が好きだな。
マッコリをほぼ全部ひとりで飲み干したのに頭が冴えていて、帰り道に駅前で借りた自転車に乗ってずっとグルグル考えていた。
持って生まれたもの、自分で捏ねたもの・積んだもの・捨てたもの・持ったままいるもの、人にもらったもの、まだ届かないもの、環境、トラウマ、思い出、欲しいかどうか、誰といるか、どこでやるか、みたいなことをずっとグルグル、断片的な思考がグルグル、引っ越してきてからよく自転車に乗るようになったなぁ、私がキム・ナムジュンです。タルンイは電動じゃないらしい、ソウルは坂がどれぐらいあるんだろう。神戸は坂ばっかだよ、おナム。
ジンくんMCで「音はずしたりしたわ…まじ自分で自分が憎い、ぴえん(※意訳)」みたいなこと言うてたけど、それよりもちょっと、なんかこう、何かを吹っ切ったような、腹が決まったような顔をしていて、よかったな。ジンくんよ、私は最近過去のライブ映像をわりと立て続けに4~5本見たんですけどね、あなたはステージに居るときに所在なげな顔をしていたり、様子をうかがうような顔をしていることが多い気がしていて、でも昨日はなんか、一旦脇に置いておくから、みたいな顔をしていたような気がする。気のせいだったらごめんだよ。でも最近の楽曲のおかげだったり、こないだのバンドとのコラボの影響だったり、もしかしたら本当に何かを吹っ切ったり、あと歳を重ねたせいとかもあるのかもしれない。そうだと良いな。
終盤の「僕がプレゼントだよ」発言については「あーはいはいありがとうございます通常営業やなあんたは、はいはいかわいいかわいい」と言って笑ってたけど、一晩あけたら今は「いやほんま、あんたがプレゼントやわ、もう受け取ってたわ既に、私は何を返したらええんや、返せるもんなんも持ってへん、生まれてきてくれてありがとう、まじで存在がプレゼントや」と大真顔でいる。7人とも、生まれてきてくれてありがとう、宝物やわ。
もし私がBTSだったら(ありえない話はやめてください)「ジョングクが居る」ということが「歌もダンスも何もかもやめてしまう理由」になり得るし、それと同時に「BTSであり続ける理由」にもなり得るだろうな。そして「僕は自分のことはつらくない、ヒョン達がつらそうなのを見ることだけがつらい」と言っていたグクが、今ステージに居るときいちばん安定しているように見えるけど、なんだ、すごいな、感動的だな。なんでこんなことが起こるんだろう、人間がやってることなのに…いや、人間がやってることだからなの?人間おもろすぎんか。
オンコン見ながら何か食べたり飲んだりできないと思う、余韻で寝られないかも、月曜休みにしとけばよかった、などと言っていたが、実際の私はバリエーション豊富な4種のキムチと牛肉をのっけたジャジャン麺、ヒラメのお刺身、チヂミ、蒸し豚、をジョングクもびっくりの勢いでもりもり食べ、ビールとマッコリをジミンちゃん並みにごびごび飲み、感情が高まったので自転車で走り回って程よく疲れ、何はともあれ今日もバンタンは最高!!!!と風呂に入り、日付が変わる前にぐっすりと寝た。
何より、私は私の仕事と生活とをやるぞ!!がんばるぞ!!!という気分になった。睡眠も栄養も足りているし、月曜からやる気に満ちている。
こんなに好影響なライブある?
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