TANAKA NOZOMI

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甘酒いっこしかなかった

2022年9月2日 (金) 21:50

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なんとなく入りにくい店、というものがある。どんなに事前にネットで調べ、インスタで商品を見ていても、間口が狭すぎたり、中の様子が一切見えなかったり、薄暗かったり、どう見ても人がいなかったりする店。値段が全くわからない寿司屋も入りにくいし、ギャラリーみたいな骨董品屋も入りにくい。

フランスに旅行したとき、どんな店でも、どんな人でも、入るとき「ボンジュール」と挨拶をする文化があると知り、好きだな、と思った。コインランドリーに入ってくる寝ぐせ頭のお兄さんも、ハイブランドのジュエリーショップみたいな高級ショコラティエの店員さんも、みな同じように挨拶をするのだ。「こんにちは」も「いらっしゃい」も「邪魔するぜ」も「ちょっと見せてね」も「ボンジュール」に内包しているんだと思う。便利だ。

フランス旅行以来、なんとなく入りにくいな~と思う店に入るとき、日本でも「こんにちは~」と言うようにしている。店なのか倉庫なのか分からないような店に入るとき、看板は出ているのに重い木の扉がある店に入るとき、とにかく先に入り口で挨拶しておく。無視されることも時々あるけど、大抵は返事があるし、何か作業をしていても顔を上げてくれたりする。特にほしいものがなくて何も買わずに店を出る場合も、先に挨拶している分、少し気が楽だ。

先日、母がテレビか何かで知ったという味噌屋さんへ行ったら、店なのか蔵なのか分からない店構えをしていて、どうにも入りにくかった。人の気配もない。とは言え味噌のいいにおいがしているし、地図で見る限り場所は間違ってはいないようだ。奥に向かって「こんにちは~!」と挨拶してみると、背中の方から返事があった。振り返ると、通りを挟んだ反対側のおうちが、味噌屋さんの家だったらしい。想像より遥かに若い味噌屋さんは「ごめんなさいね分かりにくくて、改装で工事中なんです」と言いながら、私たちを6つの樽が並んだ味噌蔵に案内し、仕込みが終わったばかりでこれから発酵するという樽の中も見せてくれた。

味噌を仕込むのに使う樽は、元は日本酒を作っていた樽なのだそうだ。酒は水分量が多いので、木製の樽はそう長くは使えない。酒蔵で使えなくなった樽はつぎに醤油屋さんに渡り、さらに古くなったものを最後に味噌屋さんが使うらしい。トータル150年ぐらい。最近では木樽で仕込む酒蔵がかなり減っており、その流れで味噌屋さんに回ってくる木樽も減っているらしい。とは言え、酒と醤油を作った後の木樽で仕込む味噌と、新品の木樽で仕込む味噌とでは、全く味が別ものだそうだ。そらそうでしょうね、こればっかりは。困りましたね。

樽は上部と下部を数か所、竹の箍(たが)で締めてあるのだが、胴のあたりは締めておらず、側板が広めに見えている。側板は木なので水分を含むと徐々に膨張し、その胴のあたりが割れ、味噌が漏れ出てくるらしいのだ。じゃあ胴のあたりも箍を締めとけばいいんじゃないの、と思いきや、なんとそこは「ここは締めずに空けておいたほうが格好いい」という理由で空けているらしいのだ。そ、そんな理由??と笑ったが、すごく日本人らしい気もする。この粋か野暮かでものごとを決定する感じ、落語を聞いているとよく出て来る。7対3の割合いで側板が見えるのがかっこいいらしい。うーん、なるほど、でも分かる気がする。

樽おもしろいな、と思って少し調べたら、側板の横の面(となりの側板との接地面)のことを「正直(しょうじき)」と呼ぶらしい。この正直面を角度を付けて削ることで、つないだ時に円形にすることが出来るのだそうだ。また、正直面は組んだ後は見えなくなるため、落書きをすることが多いらしい。100年前の樽や桶を解体すると、当時の時事ネタやお米の価格(物価)、さらには施主の悪口などが書かれていることもあるらしい。えーおもしろいね。

買ってきた味噌はすごくおいしかった、と書きたいが、母が1kg全部持って帰ったので、私はまだ食べていない。

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