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アーモンド

2023年6月30日 (金) 21:50

映画のはなし

BTS SUGAのドキュメンタリー『SUGA: Road to D-DAY』を映画館で観た。Disney+で配信されているけど、なんとなく映画館で上映があるような気がして寝かせておいたのだ。大きいスクリーンで観られてよかった。
めちゃくちゃ語弊のある言い方になってしまうけど、作中、SUGAはずーーーっとゴチャゴチャ言ってて、それがすごく良かった。あぁ人間だ、と思った。

いや、当たり前に人間だけど、でもステージに立ってる時のユンギはいつだって王の風格だし、自分を天才だと言い切り、そう、疑いようもなく天才だ。特別背が高いわけでも、特別ガタイが良いわけでもなく、ましてや普段は猫背でノソノソしているというのに、ステージではいつだって堂々と立っていて、その姿が神々しく、美しい。
そのユンギが、あのユンギが、作中では「こんなにしんどいのになんでこれが仕事なんだろう」「夢がなくなっちゃったかも」「夢がなくなったら大人になってしまうのに、ずっと夢を見ていたいのに」「成功しても幸せになれないなら、なんのための仕事なんだよって言われた、パンPDに」「アメリカ来て酒ばっか飲んでる、作業もしないで」などと延々ゴチャゴチャ言っている。どうにもならないことを、そうと分かっていても何度も何度も繰り返し考え、行ったり来たりしてしまうさまを見せてくれる。in the soopとかでも多少このゴチャゴチャ言ってんのは見せてもらっていたけど、1時間半たっぷり。たっぷりのゴチャゴチャ。うれしい。
うーん、でもわかる、グルグルしちゃうよな、わかるよ。このグルグルが、このゴチャゴチャこそがミンユンギだと知っている。いや待て、グラミーに手がかかってるような人に向かって「わかる」って言っていいのかな、でも「わかる」としか言いようがないねんごめん。
あぁ年相応だ、と思うし、これを映像で記録し、見せてくれるのか、とも思う。良いのに、ここまで見せないでも、良いのにさ、優しい子だな。ありがとうね。

「今作っとかないと」「説得する段階は後で出て来るから、それは俺の仕事」「とにかく今作業しとかないと、後で大変だから」みたいな話、あまりにも共感してしまって、私がミンユンギに共感できることなんてあるのか、ともはや不思議だった。でもパーツを作っておく、みたいなことが絶対的に要るの、すごくよくわかる。使えるかどうかはもっと後で決まるし、自分で決める場合もあるから、今はとにかく素材をたくさん用意しておく、みたいなこと、ある。わかる。それに、出役としてやること(ダンスの練習をするとか、コンテンツの撮影をするとか)が詰まってきたら、こういう「パーツをたくさん作っておく」みたいな時間は、ぜんぜん取れないんだろうなと思う。そして「説得する段階」な、あまりにもわかるわ。

作曲家でありプロデューサーであり、出役でもあるってのが、コトを複雑にしている部分は多いのだろうな。出役じゃなければもっと楽できた部分や、ある種の気楽さなんかもあったように思う。でも出役じゃないなら作れなかったものが山ほどあるのも事実だろうし、何よりユンギって「生きざま芸人」みたいなところがあるから……他に選択肢はなかったんじゃないかと思う。

in the soopのあのトレーラーにジミンが来て『AMYGDALA』を聴かせるシーンも、なんかよかったな。あれどういう経緯か分からんけどたぶん「どないなん?出来たん?」みたいな感じでジミンが自主的に来たんちゃうかな。ユンギが呼んだわけじゃなくて。ジミンはそういう「いま声をかけてもいいかどうか」とか「様子を見に行きたいけどタイミングが合ってるのかどうか」とかのバランスを見るのがとっても上手な人、という印象がある。自分が甘えているテイをとって相手を甘やかしたり、相手を楽にする言葉を人によって選べたりとか。釜山コンのビハインドで、テヒョンに「大丈夫だよ、泣かないで」と声をかけて手を握ってたの、よく覚えてる。すごい「対テヒョン」の言葉だと感じる。あまりにもストレートな慰めで……同じ状況があっても他のメンバーにこうは言わないと思う。というか、誰が相手でも、ジミンはどう声をかけるかを自分で考えて実践できる人なんだろうな。どう声をかけるかだけじゃなくて、声をかけないことだって出来る人だ。
ジミンて昔の映像とか見てると結構「俺が俺が」タイプに見えるのに、最近だと場の空気を良くしたり、調整したりするポジションになっていることが多いように思う。ジンくんとか、ホビとかがやってきたことを、ジミンがやっている。意図的にそう変えてきたのか、自然とそうなってきたのか、知りたい、聞きたいな。ジミンちょっとお茶せん?今週日曜って空いてる??
シュチムは狭いシート席にふたり並んで座って「ええやん」「もっかい頭から聞く?」とか言ってて、あのシーン、妙に良かった。
『AMYGDALA』はもともとBTSの曲として書いた、みたいな話があったと思うけど(どこで読んだっけ、なんかインタビューと思うけど忘れた)ソロ曲とグループの曲はどうやって振り分けるのかな。何か基準がありますか?

坂本龍一さんに会いに行くシーンもすごくよかった。良い顔してた。コードをいくつか弾いてくれるその横で「ヤバイいま俺の目の前で坂本龍一がピアノ弾いてる……!!!」という高揚感を隠し切れない顔をしてるユンギはかわいかった。ヒーローに会うとき、人間はみんな良い顔をする。「緊張します」と言いながらピアノの前に座り、本人の前で『戦場のメリークリスマス』を弾くところも、とても幸せなシーンだった。
映画には入っていなかったけど、坂本龍一さんはこのあとユンギの肩と背中をやさしくトントン、として、孫に言うみたいに、「いい子だ」と言ってくれたのだった。そうなんです教授、いい子なんですありがとうございます。
つーかユンギってすごいかわいい人なんだよな、愛らしい人というかさ、かわいげがある。あんなにずっと歌詞が怒ってるのに、不思議だが。いいなぁかわいげがある人は。うらやましいよユンギ。

2023年6月、ソロツアーを終えて、追加公演も発表された。ユンギが今何を考えているのか知りたい、が、まぁ結局はユンギが幸せで、やりたいこと全部やって、健康でいてくれたら、私はうれしい。

Can you fix it?

2023年5月10日 (水) 22:14

映画のはなし

映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を観てきた。最近は週1ペースで映画館に行くので、予告編を観る機会が多くあり、観たいな~と思っていたのだ。目が忙しそうなアニメーション映画なので、字幕版で観るか吹替版で観るか悩む。吹替版を選ぶことってほとんどゼロに近いぐらい無いけど、ディズニーとかピクサーとかは吹替版が好きだったりもするので悩む。トム・ハンクスは大好きだけど私にとってウッディーは唐沢寿明だし、バズは所ジョージ。
誰か観た人おらんかな~と思ってTwitterに書いたら、菜緒さんが「吹替版バッチリだよ!」と教えてくれてかわいかった。おすすめされたものに素直にトライすることにしているので、早速観てきた。

感想を箇条書きに。

  • 本編前のタイトル画で初めて吹替版の脚本が上田誠さんであることを知り、心の中でガッツポーズ
  • 序盤から横スクロールのシーンがあり、ワクワクが爆発
  • 道具を持つルイージと、ドアを開けたりして走りやすくしてあげるマリオの、協力プレイシーンっぽいのも最高
  • 犬使いたいよね、イルミネーションやもんな〜犬得意やんな〜
  • イルミネーションてかなり新しくできた制作会社、というイメージでおるけど、とは言え2007年設立らしい、そんなに新しくもないのか……
  • ピーチ姫はそういう経緯でキノピオと暮らしてるんやな、知らんかった(これ映画だけの設定?)、だいぶ端折ってあったけど、大事に育てられたんやな、ということが伝わった
  • こういう「詳細は端折るけど伝わってほしい部分だけは的確に伝える」みたいなことの技法、文献とかある??
  • 私はマリオをそんなにプレイしてない人生やけど、ちゃんと耳馴染みのある音が方々から聞こえて楽しい
  • 「やらいでか!」とか「〜まである」とか台詞回しが新鮮でいい感じ、字幕版も見たくなっちゃうな
  • カートの、車選ぶシーンたのしい、レースよりあの車選ぶ時間のほうが楽しいまである
  • 結構手垢つきまくりの楽曲(キルビル、a-ha、Mr. Blue Skyなど)を使うのでちょっとヒヤヒヤするものの「だって使いたいもん!」みたいな無邪気さが感じられてむしろ好印象、どのシーンか忘れたけどAC/DCもかかってたね
  • Mr. Blue Skyを素敵に使ってくれた映画といえばガーディアンズ・オブ・ギャラクシーだと思うけど、こっちも最新作が上映中なのでぜひ映画館で観たい
  • とか言ってたら字幕版マリオはクリス・プラットさん(ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーの主演の役者さん)だそうです、ええやん…字幕版も観たいやん……
  • っつーかヨッシーは出ないの?と思ってたら本編終盤でたまごだけチラッと映り、なおかつエンドロール後にも出してくる、続編をやるつもりなんか…?
  • マリオとルイージはキノコ王国で暮らしてる風のエンディングやったけど、あんまり詳しくは見せなかったのも気になる、おい続編をやるつもりなんか…??
  • ディディーがチラッと出たのかわいかったね
  • ピーチ姫がガッツリ戦う系プリンセスなのも現代っぽい(ゲーム内でこんな戦うっけ?ってかプレイヤーではないよね?そういうシリーズもあるんかな)
  • BTSメンバーをマリオのキャラクターに例えると?へのジンくんの回答がマリオ=ユンギ、ルイージ=ジミン、ドンキー=グク、クッパ=ナム、ヨッシー=ホビ、キノピオ=ジンくん、ピーチ姫=テテ、やったの首もげるほど頷いちゃった
  • キノピオの「死ぬにはかわいすぎます~!」みたいな台詞、あまりにもキムソクジン
  • 自分のかわいさに自覚があるキノピオ、キノピオってこんなキャラクターやっけ?
  • ごはんを振る舞って衛兵の気を引くキノピオ、あまりにもキムソクジン、めっちゃやりそう、「さぁ今のうちに!行って!」みたいなことめっちゃやりそう
  • クッパ役の三宅健太さんはスラダンでゴリの声優さんだったのか…すんごい上手だった、歌も?歌もご本人なの??
  • 字幕版のクッパ役はジャック・ブラックらしい、うわぁ観たい、歌うジャック・ブラックは最高やからな…
  • 意外とデートムービーなのか、年齢問わずカップルが多くておもしろかった、恋人と映画観に行くの、実は結構ムズくないすか?
  • 字幕版も観たくなっちゃったな、普通にもっかい観たい、ジンくんと並んで観たい、帰り道で「帰ったらマリカーやろうよ」「やろうやろう」みたいな話したい

Flying Theme

2023年4月27日 (木) 21:53

映画のはなし,音楽のはなし

映画『Coldplay Music Of The Spheres: Live at River Plate』を観た。ジンくんが出ているからだ。ジンくんは入隊前、ソロシングルとして『The Astronaut』をリリースし、その曲を作ったクリス・マーティン率いるColdplayのアルゼンチンでのライブに出演した。入隊前最後のステージだった。

ステージの映像は後日Youtubeで公開されたが、私は「なぜこれを見るためにアルゼンチンに行かなかったのか」と後悔した。私が人生で後悔していることなんてほとんどない。結構いろんなことをあっさり忘れてしまうし「まぁ何らかの理由があってこうなってるんだろうな」とか「あのころは思いつかなかったから仕方ないな」みたいな捉え方をしているので「後悔」と名前をつけていることなんて、ほとんどないのだ。だから「なぜこのステージを見に、アルゼンチンへ行かなかったのか、行けなかったんじゃなくて、行こうとしなかった」と、未だに後悔しているのは自分でもめずらしいことだと思う。
行けばよかった。その気になれば行けたはずだったのに。丸1日飛行機に乗って、ジンくんが歌う5分のために、ブエノスアイレスへ行けばよかったのだ。入隊直後は私の情緒がかなりアレ(かなりアレて)だったので「あの5分が最後だったかもしれないのに、ジンくんがステージに立つのは、あれが最後だったかもしれないのに」と考えてしまってつらかった。
もし次の機会があれば、世界のどこでも行こう、というか行こうと努力はしてみよう、と心に決めて、せめて映画は観ることにした。

Coldplayは言わずと知れたイギリスのロックバンドだ。今調べたら、グラミー賞を7回も受賞している。モンスターバンドですね。
私は16歳か17歳あたりで『A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD』をTSUTAYAさんで借りたのが最初だったように思う。砂の人が崩れるようなジャケのやつ。初めて買ったアルバムは『VIVA LA VIDA OR DEATH AND ALL HIS FRIENDS』、そこから『GHOST STORIES』くらいまでは比較的熱心に追っていたものの、音楽性が変わり(というかColdplayってアルバムごとに結構ごっそり変えるね)、音数が増え(私は基本的に音数が少ないスカスカの音楽が好き、これはただの好み)、大局的なことを歌詞にするところに、だんだんついていけなくなってしまった。
というかまぁこれはColdplayだけじゃないけど、世界的に売れたバンドって、大体なんか環境問題とか、世界平和とか、宇宙の真理がどうとか、そういう「なんかでかいこと」を歌うようになっていく。まぁ冷静に考えたら当たり前だ。友だちと組んだバンドで、イギリス国内だけで活動していたような頃とは違うんだから、目に見えるものが変わってくるんだから、いつまでも四畳半の部屋に暮らしてるような曲ばっかりを書き続けるわけがない。頭では分かるけど、でもこっちはまだCDを買うのすら金銭的ハードルがあったティーンエイジャーの気持ちを今もリアルな手触りで覚えているし、精神的には四畳半の部屋に住んでるままなんだから、置いていかれる子どものような気持ちだ。まぁ、この気持ちをクリス・マーティンに分かってほしいとかは全然思わないけど。だからこそ、ただ勝手に距離を取り、疎遠になってしまう。

そんなだったから、BTSとColdplayのコラボ曲『My Universe』は私にとってColdplayとの再会の曲でもあった。BTSのメンバーはColdplayのファンだと公言しているし、カバーした『Fix You』は本家を超えるほどの名作だったから、コラボを意外だとは思わなかったけど、クリス・マーティンは始め「音楽性が違いすぎる、うまくいくわけない」と否定的だったらしい。
でも「Coldplay聴く奴はゲイ」などと差別的に揶揄されてきた彼らと、「女みたいに化粧して踊るアジア人」などと偏見を向けられてきたバンタンは、通じ合う部分があるだろうと思う。確かに音楽性は違うかもしれんけど、でも同志みたいに。

映画『Coldplay Music Of The Spheres: Live at River Plate』はアルゼンチンの首都ブエノスアイレスでの公演をディレクターズカット版にしたものだそうだ。当日(去年の10月28日)は世界中の映画館でライブビューイングが行われたらしい。
序盤、クリス・マーティンがそのライブビューイングを実施している国の名前を読み上げるシーンがあった。たぶん50か国分くらいを、アルファベット順に。何かメモを見て、それを読んでるんだろうと思ったら違って、暗記してて、すごくかっこいいシーンだった。覚えたのか!というかっこよさもまぁあるけど、それより読み方というか、ピアノをちょっと弾きながら、ラップみたいに、ポエトリーリーディングみたいに読むので、それがすごくかっこよかった。

クリス・マーティンは全編を通して体力オバケだった。スタミナと、あと場の掌握力が尋常じゃない。体を鍛えてる、とかはもちろん普通にあるとして、たぶん「言いたいことがめっちゃある」という状態なんだろうな、ということがビッシバシに伝わってきた。言いたいことがある・伝えたいことがある奴は、ステージ上で一番強いと思う。何万人もの人に真正面から伝えたいことがあり、それを理解してもらうために音楽をお供えしているようなライブをしていた。カメラに写っている限りでは、観客はそれを受け入れているように見えた。つーかめちゃくちゃ盛り上がってて、みんなよく歌ってたし、楽しそうなのも良かった。

終盤では、それこそ四畳半くらいのサイズのステージでアコースティックな雰囲気で演奏をするシーンもあり、私は「置いていかれる子どものような気持ち」とか言って長いことゴネていたことを恥じ、反省した。何をつまんないことを言ってんだろう、ごめんね、私が間違ってたよ。長いこと、ごめんなさいね。
ギターのジョニー・バックランドはすごく繊細できれいな音を出す人なので、正直こういうステージのほうが映えるようにも感じた。

クリス・マーティンはメンバーひとりずつに感謝を伝え、愛おしそうな目で見て、メンバーはみな誇らしそうな、でも照れくさそうな顔をしてそれに応えていた。私はバンドのこういう、チーム感みたいなものにめちゃくちゃ弱い。人間が人間同士でやることに「永遠」なんかないと知っているからだ。ベショベショに泣いた。
あとColdplayはライブの時、ドラマーのウィル・チャンピオンさんがメインでコーラスをするスピッツタイプのバンドなんですが、このウィル・チャンピオンさんが、すごく良くて、声質も良いし、アガりました。コーラスが上手いドラマーってなんでテンションあがっちゃうんやろ。私だけ?みんなもそう?

クリス・マーティンが「歓迎してほしい、わざわざ韓国から来てくれたんだ」と紹介し、ステージに上がったジンくんはあまりにも「宝物」だったので、ちょっと眩暈がした。キラキラしている。ティンカーベルが撒いた妖精の粉みたいなのが見える。内側から発光している。推しの贔屓目でそう見えるだけなんだろうか、いやまぁそれはそうだろうけど、でもあまりにも宝物だったので……「あまりにも宝物」って大丈夫?何言うてるか分かる?
ジンくんは緊張はしているようだったし、ソワソワしている感じはあったけど、でも浮ついている感じは見受けられなくて、ただいつも通り、ちゃんと仕事をしていたのが良かった。私はジンくんがいつでも自分が出来ること・これまでやってきたこと・たくさん練習したことを地に足つけてちゃんと披露するところがとても好きなのだ。奇跡を待ったり、過信したりしない、丁寧に仕事をするところが好きだ。
曲そのものや状況自体が既に十分エモいので、パフォーマンスの部分をエモくしてしまうともう胸やけするんじゃないかな、というシーンだったが、ジンくんはさすがにバランス感覚が優れていて、圧巻だった。

あぁ本当に、行けばよかった、ブエノスアイレス。でも今日のところは、映像で観られたことがありがたい。

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