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もし天才だった場合

2018年6月11日 (月) 22:10

映画のはなし

沖田修一監督の「モリのいる場所」を観てきたので、最高だったので
最高だったことを書きます。
ネタバレ禁止協会のみなさまはお引き取り願います。念の為。

「滝を見にいく」からもう4年?と、思ったら
間に「モヒカン故郷に帰る」があったわ、忘れてたごめん。
沖田修一の映画はいつも食べるシーンが印象的で、
「南極料理人」とかはまぁご飯の映画と言えるので分かるけど
そうじゃない映画でもご飯のシーンが大事に撮られてるなぁと思う。ご飯が好きなんですかね?監督。
すごい好きなのは「キツツキと雨」で海苔を食べるシーン。
本編というか、話の大筋とは別に関係ないのかもしれんけど
あの親子の、関係性とか空気感とかが、あのシーンからにじみ出てて好きだ。

「モリのいる場所」でも、冒頭の朝ごはんのシーンと
カレーうどんのシーン、大勢で食べるすき焼きのシーン、と
愛おしいシーンがたくさんありました。
あの大勢で食べるすき焼きのシーンは撮り方も好きやったなぁ、
あ、もう一回行くんですねカメラ!と思った。…伝われ!

タライのとこ(加瀬亮の足、よかったよねぇ)と、”知らない男”のシーンは
「ちょっとやりすぎでは」みたいな感想も見かけた(filmarksで)けど
私はそうは思わなかったな。
「えっ何?何何?」と思う画をやけに長く回して不安にさせてきたりするの、
沖田修一の好きなところのひとつでもあるから、
ぜんぜん、沖田修一がやりたいと思ったのをやってくれ引き続き、と思った。
前述の2つのシーンについては、妙な浮遊感があって良いなーと思ったけどなぁ、私は。

映画「南極料理人」でも、観測隊員と通信して質問を受け付けるシーンで
男の子を真正面から撮ったカットがやけに長く入ってて、
「え、なに、何の時間?え?」って思って、
ああいうの話の流れとは大きくは関係しないのに、なんか記憶に残るんよな。
サラッと流せないというか。

沖田修一が演出したドラマ「火花」の5話にも
マネージャー(染谷将太)がコピー機の前でじーーーーっとしてる妙に長いシーンがあって、
あの「え、今なんの時間?なにこれ?」ってなる、
あのざわざわとした気持ちに私は沖田修一を感じてると思う。
まぁ不穏さというか。

あと、何と表現すればいいのかずっと困ってて、しっくりくる言葉が見つからないので、
仕方なく暫定的に”俗っぽさ”と私が呼んでいる沖田修一の良さがありまして、
「モリのいる場所」ではカメラアシスタントの子がまさにそれで、
あの子が「明日も行くんすか?」って言うあのシーンが、とってもよかったなぁ。
ともすれば”ゆるい”とか言われて、その棚に雑に仕舞われてしまいそうな沖田修一作品において、
この”俗っぽさ”は本当の本当に重要、と思う。
「キツツキと雨」で海苔を食べるシーン(というか海苔の食べ方)とか
「南極料理人」でぼんちゃんとドクターが手伝ってるあのしゅうまいのシーンとか、
これ何て表現すればいいんでしょう。

こういう映画、宣伝が難しいのだろうな、と思って
例えばキャッチコピーを付けるにしても、どこをどうピックアップしても
”ピックアップする”という行為自体がこの映画には不向きな感じがして、
結果”夫婦愛の話”みたいなコピーが付いてて、うーーーーーん、となった。
でも”夫婦愛の話”ではない、とは思えない、十分に”夫婦愛の話”でもあるし、
間違ってはないけど、かといって全然芯食ってないし、うーーーーん、となった。難しいね。

ただこの”どこ切ってもどこ食べても沖田修一の味がする映画”が
本当に愛おしいと思うし、これが映画館で観られる2018年に生きてるのがうれしい、とすら思った。
どアタマに、庭をずーっと横移動して撮るシーンがあって
隙間にモリが居て、気づくか気づかないかぐらいの絶妙なトーンで居て、
あのシーンからもうグッと来まくってたわ。あぁー好き!沖田修一好き!ってなったわ。

この”沖田修一映画宣伝難しい問題”(問題なのかどうかはさておき)については
ご本人がブログでこう書いていらっしゃるので、もうこれでいいと思う。
—————
映画「モリのいる場所」は、実在した画家、熊谷守一さんの、晩年の夏の一日を切り取った映画です。
真珠も桃も、猿も骨も出てきません。
難しい映画だと思われがちですが、そんなことは全くありません。
たくさん、虫が出てくる、楽しい映画です。
小さな庭の冒険物語です。
—————

そうそう”たくさん、虫が出てくる、楽しい映画”ね、そうそう。
あの虫が歩く音?足音?カサカサカサっていうあれは
ほんとにあの場で録音したやつなのかね。気になる。
”蟻は左の2番目の足から歩きはじめる”も気になる。ほんとかな。

あと画家の話をやってるのに結局絵を描いてるシーンが一切出てこなかったの、
完全に意図的にやってるってのは分かるけど、その心は?と思う。気になる。
どうやら夜しか絵を描かなかったらしい(晩年だけ?)ので
その謎めきを謎のままにしたかった、ということかな。気になる。

”モリ”は実在した画家・熊谷守一という人で、私は全然知らなかったんですけど、
すごく貧乏したり、文化勲章を辞退したり、全然家から出なかったり、
本人は長生きしたけど子どもが小さい時に亡くなってしまったり、した人、のようです。
記念館があるみたいです。気になります。

というわけで「モリのいる場所」、絶賛上映中です。
ぜひ劇場でごらんください。音楽もとっても良いです。

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