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爪みたいな月

2020年10月20日 (火) 20:06

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空港が好きだ。床材のせいか、天井が高いせいか、理由は知らんが音が柔らかい。靴音も、キャスターを転がす音も、人の話し声もアナウンスの音声も、みな一様に角の取れたまるい音がする。国内線にしか乗ったことがなかったので日本の空港だけかと思っていたら、ジョンエフケネディ空港も、シャルルドゴール空港も同じような音がしていたのでうれしかった。あのエフェクトがあったら欲しい。何に使うかは知らんけど。

雲の上から見る富士山は、フジツボに似ている。あ、逆か?もしかしてフジツボは、富士山に似ているから“フジ”ツボ?そうかも。
注意深く見ると山道が見える。私が富士山に登ることはないだろうな、と思う。こういうことを思うとき、自分のことなのに他人事みたいな感じがする、「この人富士山とか登らなそう、誘われても断りそう」みたいな感じ。

乗り合わせたスーツの人たち数人が、よく見ると全員全く同じネクタイをしている。髪型とか、筋肉のつき方が、会社員には見えない。「何かのスポーツのチームではないか」と仮説を立てたものの、検証のしようがないので真偽は分かりません。

下に見えるのは明石の海なので、たぶん海苔の養殖をしているんだと思う。いや分からん、牡蠣かも。牡蠣の釜めしおいしかったなぁ。
上から見ると養殖場の目印が等間隔に並んでおり、点線になっている。フォトショップの選択範囲に見えるなぁ。かわいい。

人に夕飯をご馳走になる、つまり奢られるのが苦手だ。というかどんな顔をしていいか分からなくてくすぐったい。あと森羅万象を深読みする悪癖のせいで落ち着かない。ご馳走になる明確な理由か、もしくは何らかの大義名分がない限り、すぐ「きっちりワリカンね!」もしくは「経費で落ちるので!会社にも言われてますので!」とか言って済ませてしまうことが多い。
「ここ、払ってもいいですか?」と言われ、癖で「いやいや、きっちり割りませんか」と答えてしまった。「まぁ確かに、こういうのキライそう、やなんですよね?」と重ねられたので、試しに「いえ、やぶさかではないです」と言ってみたら、それでコトが進んだのでびっくりした。
そうだよ、おっしゃる通りで、私は本当はこういうのは嫌いだし、気持ちの据わりが悪くて所在ない感じになるからやなんだよ。
でも”試し”に言ってみるだけで、ちょっと違う未来へ来たね。「私にはできない」と思ってること、まじで全部が全部このケースなんじゃないの、「できないんじゃなくて、やったことないだけ」のやつじゃないの。
わぁ、できたわ、やってみたらできた、なんや、そんな難しいもんとちゃうかったな、できたできた、とひとりで小さく感動し、うれしくてフワフワしていたら帰り方が分からなくなって混乱した。

「これから帰るね」とLINEを打ってると、”家”と”帰る場所”とは必ずしも一致しないことに気がつく。「これから行くね」と打っても行動はおんなじなのにな、でも「帰るね」がしっくりくる。

さーて、買ってきたパンを冷凍して寝ちゃお。洗濯してえらかった。

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