TANAKA NOZOMI

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2022年4月18日 (月) 22:00

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久しぶりに、少しだけレタッチ作業が発生した。楽しい。
レタッチとは、画像編集ソフトを使って写真に「ひと手間加える作業」のことを言う。電車の中吊り広告や雑誌や、世に出ているあらゆる写真はすべてレタッチ後の写真である。
例えば某女性歌手は専属のレタッチチームがいる(人によってレタッチの加減が違うので、毎回印象の違う顔になるのを防ぐため、と思われる)と聞いたことがあるし、そのぐらい重要な作業であると思う。

芸能人だけでなく、一般人の写真でもレタッチはする。というか人間の顔以外もレタッチはする。ビルの窓から電線の映り込みを消すとか。それを撮ったカメラマンが自分でやるケースも多いと思うけど、撮ったまま納品する人も全然いるから、その場合はデザイナーがやる。と思ってるけど、違うのかな。
とはいえデザイナーでも全くやらない人もいるようで、例えば歯医者さんのパンフレットとかを待合室で流し見ていると、一切レタッチしてない歯科衛生士さんの写真が「スタッフ紹介」みたいなページにずらずら並んでいて、そういうときは「おいおいおいさすがにこれはあかんやろ……多少はやんなさいよ……」という気持ちになったりする。
別に必須作業ではないし、見積書に計上できるほどの大がかりな作業ではないけど、でも写真素材もらって、ちょっとクマ出来てたり、2本ぐらい白髪が見えたりしたら、それぐらいは消してあげようよ……私だって別にレタッチ上手ってわけではないけど、でもクマと白髪なんかは5秒あれば消せる程度のことだし、クマ消されて怒る人は見たことないし、じゃあやっといたほうが良くない?

私は最近はWebの仕事ばかりやっているからあまり神経質なレタッチ作業が発生することはないが、印刷物を作るDTPデザイナーだったころは日常茶飯事だったし、レタッチだけやる仕事もたまにあった。
キツかったのはバイクレースの、バイクの車体のレタッチで、映り込みを消すのはもちろん、ツヤ感の細かい注文や、サンプル(しかも印刷後の紙)がバイク便で送られてきて「これに色調を合わせてください、完全に」みたいな無理難題が多かった。
毎回深夜の作業になるので肩こりと眠気で朦朧としながら、フルフェイスのヘルメットで一切顔の見えないレーサーを睨みつけていたことを覚えている。へんなもようのバイクにのりやがって。ぜったいにゆるさんからな。
冷静になって考えるとレーサーにはなんの罪もない、レタッチの注文が細かいのは編集部の狂気的なこだわりのせいだし、納期が厳しすぎるのはうちの営業のせいだ。

楽しかったのはギャル雑誌のモデルさんたちのレタッチで、つけまつげの根元にある見えないほうがいいラインを消したり、照明の加減で少しくすんだチークを調整したりした。
女性は、とくにメイクをしている女性は年齢にかかわらず「自分をどう見せたいか」がメイクに出るので、レタッチは比較的簡単だと思う。隠そうとしているところが見えたら、それを消せばいいし、アピールしたい部分が見えたら、それがより良く見えるようほんの少し調整すればいい。ホクロひとつとっても、チャームポイントだと感じているのか、出来れば取りたいと思っているのかは、メイクを見れば分かる。

難しいのはおじさんのレタッチだと思う。おじさんはほとんど全員メイクをしていないし、シミもクマも、髭の剃り残しもそのまま、みたいな写真を出してくるケースが多い。ひどい場合は目頭に目やにが付いていたりする。ホームページなり、パンフレットなり、第三者が大勢目にするどこかに自分の顔写真が載るというのに、気にならないのだろうか。
どうしようかな、どこをどうレタッチしよう、つーか私いま400%拡大で作業してるけど、このおじさんはこんなに寄りで見られるなんて、思いもせんのやろうな。

おじさんは高齢であればあるほど「男がそんなことを気にするのはカッコ悪いこと」という価値観があるのだろうことは推測できるけど、でももう「そんなことありませんよ」というのを大きめの声で言っていったほうがいいのかもなぁ~~~という気もする。いつどこで誰に言えばいいのかは分からんが。別に肌加工のアプリでつやつやにせぇとか、目を大きくせぇとか、いや、そもそも若く見えるようにとか、盛って、とかそういう話じゃないけど、うーん、伝わらんのかな。あなたはあなたのまま何者にもならないでいいけど、でもどこかに載る写真はぜひベストオブユーであろうぜ、というだけの話なんだよ。

一方、いかにも写真館で撮りました、という類の写真は、現場にいるであろう百戦錬磨のヘアメイクさんや慣れているベテランカメラマンがうまいことやってくれている場合が多く、デザイナーがあまりいじくりまわす必要がない仕上がりになっていてありがたい。どこをどうレタッチすれば、と悩む必要もないし、まさか鼻毛が出てたらどうしよう、と700%拡大にして見知らぬおじさんの鼻毛をチェックする必要もないからだ。

みなさんも「ホームページに載せるおじさんの写真が要るってさ、そんなんないよな?撮らなあかんな~」とかいう事態が発生した場合、写真が趣味の社員が頑張って撮る、とかはどうか、やめておいてほしい。街の写真館・フォトスタジオなどへおじさんをお連れし、何もかもをプロにお任せすべきだと思う。
写真が趣味の人は写真を撮るのは確かに上手な場合が多いけど、おじさんを撮るのが上手いわけではないと思う。かわいい子どもとか、すてきな風景とか、きれいなお花とかを撮るのと、おじさんを撮るのは、ぜんぜん違う。

そういえば何年か前に、私の父が地味な色の服ばかり着るので「もうちょっと明るい色の服着たらええのに、青とかでもええから」というようなことを家族で言っていたら「オッサンが服こだわってもしゃあないやろ、若い子ちゃうねんから」と返されたことを思い出した。
私はとっさに「いや若い子は服なんかこだわらんでも白Tにジーパンでもサマになるけど、オッサンはそうはいかんやん、オッサンこそ服こだわらなあかんのちゃうん」と思ったが、本人には言えなかった。言えなかった理由は自分でもわからないが、「レタッチどうこう以前の写真やな」と思うときと、似たような手触りの感情が、胃の底に残る。

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