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あんまり覚えてないや
2022年6月20日 (月) 21:36
「子どもはいないの?」「じゃあ一人暮らしなの?」と聞いてくるのは、大体が見ず知らずのおじさんか、見ず知らずのおばあちゃんか、それか子どもだ。少なくとも同年代の女性に聞かれたことはない気がする。性別・年代・ジェンダーなどによって、その質問のセンシティブさが異なるのだな、と思う。見ず知らずのおじさん・おばあちゃんは私を私としてではなく「結婚して子供がいるくらいの年齢の女性と思しき人間」くらいの記号として話している。それは憤りを感じるほどのことでもないし、私もきっと同じように、見ず知らずの人を記号として接しているシーンがあるのだろう。……やだな。こういうのって意識すれば直せるんだろうか。まぁ私が見ず知らずの人に話しかけるシーンなどほぼ発生せんけど。
「お子さんは?」「ご結婚は?」のあとに続けて「あらぁそうなの、孫を紹介したいわ~」と言ってくるおばあちゃんはわりと多い。が、孫がそのことを了承しているケースは絶対に無いと思う、確かめたことはないけど。まじ勝手なこと言うのやめなよ、私が森羅万象を真に受ける妖怪だったらどうする気なの。大切な孫を深い森に連れ去る妖怪かもしれんのに。
ま、社交的なおばあちゃんはかわいいと思うし、私もおしゃべりは嫌いじゃないし、あと妖怪じゃないし、そもそも本気で孫を紹介する気など初めからないのだから、一時の話のネタになるなら、それでいいのかもしれない。
こないだバス停でおしゃべりしていたおばあちゃんにも「おいくつなの?」「お子さんはいらっしゃるの?」「ご結婚は?」「孫紹介したいわ~」の4コンボをいただいたので、「ちなみにお孫さんおいくつなんですか?」と聞いたら「18よ、素直でいい子よ~」と言われて笑ってしまった。18の子を紹介されてどないしたらええねん、犯罪じゃないのか、頑張ったら産める年齢やぞ。とは言え、18歳にして「素直でいい子」と祖母に言わしめる孫、きっとほんとにいい子なんでしょうね。「ふつーに彼女おるやろ」と言いかけてやめ、「じゃあこの春から大学生ですか?将来がたのしみですねぇ」と言うに留めた。
友人の子どもに「家に子どもはいるの?」「じゃあひとりぐらしなの?」「ひとりなの?ずっと?」「さびしいときないの?」と聞かれたときは、少し答えに詰まった。相手は子どもなのだから「さびしくないよ~」と簡単に言ってしまえばよかったのかもしれないが、そう出来なかった。「さびしくないの?」ではなく「さびしいときないの?」と聞かれたからだ。
一人暮らしはさびしくない。気楽で楽しいし、性に合っている。そのうえ私はさびしさを軽視しない主義なので、さびしさの訴えを無視したり、さびしさを無下に扱ったりしてこなかった。必要なら私の休日を丸一日さびしさに差し出して、ふたりきりで過ごすことも厭わなかった。さびしさに全力で構ってあげられる時間的余裕があることも、一人暮らしの強みと言えるかもしれない。
まぁ、手懐けたとは思ってないけど、つーか「手懐けた」とか言うとさびしさはご機嫌を損ねるでしょう。あの人そういうとこあるよね(あの人?)。
彼の質問は「さびしくないの?」ではなく「さびしいときないの?」だ、これに「ない」とは答えられない。だって、さびしいとき、あるもんな。ずっとじゃないけど。でも有無を問われてるんだから。「さびしいときないの?」か……なんて秀逸な質問……いや、言い間違えただけかもしれんけど。
私は「さびしいときはあるよ、時々な」と答えた。すると「そういうときどうするの?」と返された。うーん、これまた良い質問だな……
「そういうときはさびしいなぁ~と思ってるよ、今日は、さびしい日やなぁって」「それだけ~?どっか遊んだりしないの?誰か遊んだり」「まぁそういう日もあるけど、でもさびしい日は何したってさびしいからさ」「ふーん」
この子にもきっと、特に理由などないのに「さびしいとき」があるんだろう、私と同じように、そしてそういうときは「どっか遊んだり」、「誰か遊んだり」するんだろう。誰かから「さびしさ」を取り出して見せ、その小さい手に載せられたことなどなくても、自分の「さびしさ」がどんなものか、ちゃんと知っているのだ。そしてそういうときは、どうすればさびしくなくなるのか、この子はこの子自身の経験として、知っているのだ。すごいことだな。めちゃくちゃすごい。
そしていつか、この子も気づくんだろうか。この「さびしさ」は自分だけのもので、同じ名前を付けたから同じものだと錯覚してしまうけど、人のそれとは全然ちがうものだと、知る日が来るんだろうか。
そのときまた、「さびしさ」の話ができたらいいのにな、と思う。
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