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2019年11月19日 (火) 21:00

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友だちが神戸に遊びに来てくれて、3日半たっぷり遊んだ、楽しかった。楽しかったけど、あまりにずっと一緒にいたので、帰ってしまうのがさみしかった。
元々”ひとりでも大丈夫な国”生まれの私は、ひとりで暮らしている家も、ひとりで過ごす休日も、普段はなんにもさみしくなんかないのに、友だちが帰ったあとは妙に脳ががらーんとしてしまい、ソファに座ってぼーっとしたり、いつの間にか寝たりしていたら日曜日が終わってしまった。腑抜けている。

友だちは専門学校の2年生の時におんなじクラスだったけど、当時はそんなに仲は良くなかった。仲良くなるのはもっと後の、卒業後のことなので、ちょっと…もったいなかったな、と思う。

専門学校だけがそうなのか、もしかしたら大学もそういう感じなのか私には分からないけど、2年生になると課題を出さない人が増える。たぶんクラスの半分くらいの人が、授業に出て来なくなる。

1年生の時の和気あいあいとした授業内容(個人のレベル差も正直そんなにない)に比べると、2年生はシビアな課題が多くなるし、何日間かかけて課題をやって最後はプレゼンして講評もらって、そんでまた次の課題が出る、という流れで進むので「毎回課題をやってプレゼンする人」と「課題をやらないのでプレゼンに出すものが無い人」とに、わりときっちり分かれる。

私は性格のせいなのか、とにかく”のんびり楽しい学生生活”みたいなものには全くご縁がなく、いつも何かに追われて急いでいたし、地元でも大阪でも同じような専門学校が山ほどあったのに、わざわざ必然性のない東京に出ることを許し、高い学費と家賃を払ってくれた家族に心から感謝していて、その恩を返すためにも早く働きたかったので「毎回課題をやってプレゼンする人」だった。

授業が終わるとバイト先のスーパーに直行し、休憩中はご飯を食べながらラフを描いて、レジ横に捨ててあるレシートの裏にロゴ案を描いて、閉店まで働いたらすぐ家に帰って課題をやる、というような毎日だった。バイトしなきゃ食えなかったし、それでも数百円のプレゼンボードを買うのにお金を工面しなきゃいけないような状態で、必死だった。

苦労しましたっていう話じゃない、これは全然そういう話ではない、だって全然苦じゃなかった、こんなに学校が、授業がおもしろい世界があったなんて知らなかった、今までの古文とか数Ⅱとかの机に突っ伏して寝るしかない膨大な時間はなんだったんだよ。出遅れた、もっとはやくこっちへ来ればよかった、と思った。
ほとんど睡眠時間が無かったけど、あの頃は本当に眠くなんかなかった、作りたいものがたくさんあって、使いたい紙がたくさんあった、毎日たのしかった。あと当たり前に、今より若かった。

友だちも同じく「毎回課題をやってプレゼンする人」で、しかもクラスの中でもほんの数人しかいなかった「ちゃんとおもしろいものを作る人」だった。エラそうにすみませんね、でもまじで5~6人やったもん。

本の装丁を作る課題のとき、ブックカバーと帯を作る、っていう課題だったけど、友だちは「帯が嫌いなので付けたくなくて、なので細い帯にしました」と言って10mmくらいのめちゃくちゃ細い帯を提出していたのを覚えている。なんだそのアイデア、かっこいい…!と思って、びっくりした。

いくら課題とは言え「嫌いなので付けない」という選択肢もある、というか私ならそうする、そして帯が嫌いな理由をしつこくプレゼンして、代わりになるもの、しおりを付けるとか、いろいろ逃げ道あるのに!
ちゃんと正道を行くのに、タダでは行かない、というそのひねくれ方。私もひねくれてる自覚があったけど、私のと全然違う、私はすぐ邪道を行こうとするけど、この人のは違う。

なんかの広告(忘れた、新聞広告かな、社会問題的なやつやっけ、私何作ったっけ、何にも覚えてない)の課題のときも、ポイ捨てされたタバコの写真を撮るために家に帰るまでの間に吸い殻を拾ったりしていて、かっこよかった。フリー素材でいっぱいありそうなもんなのに、そこを端折らない、不快感を経験する・体感する、という正道の通り方。

なんて実直な人だ、と思った。今も、ずっと、そう思う。友だちは実直で、それゆえに自分に厳しいし、思考の潜水が深い。たまに「そんなに深く潜ってしまって、大丈夫か、息続くのか」と思う、心配になる。でも友だちが行きたいなら行って欲しいし、私は止めたくない。止めるのが本当の友だちなのでは、と思わなくもないが、それなら私は友だちになりたいんじゃないのかもしれない。だって、ずっと深くまで潜って、深海魚とか見てきてほしい、何を見つけたか、何が見つからなかったか、どんな色をしていたか、その話を聞きたいもん、全然止めたくない。”本当の友だち”ってなんだよ。

あなたに似てるようで似てない私は、陸で「いってらっしゃい」と「おかえり」を言う役をやるわ。あなたがどんなに疲れて帰ってきても、身体がはんぶん魚になったりしても、とんでもないサイズの岩を抱えて帰ってきても、顔色ひとつ変えず「おかえり」を言う。
今、友だちが潜っている海はいくつかあって、どれも広く、深そうに見えるけど、でもあなたが「もう潜りたくない」と言うまでは、ずっと「いってらっしゃい」を言うね、どうか気をつけて。

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